レーザー変位計の原理とは?ミラー方式・三角測距をやさしく図解【設計・生産技術者向け】

基礎知識・原理

非接触で対象物までの距離・変位を測るレーザー変位計。その心臓部である「三角測距」の仕組みから、鏡面対応の正反射型、面計測を可能にするミラー(走査)方式、さらに高精度な共焦点・分光干渉方式までを、図解で整理します。

変位計そのものの全体像(種類・原理・用途・選び方)は、まとめ記事「変位計とは?原理・種類・用途を徹底解説」で解説しています。

この記事の結論(先に要点)

  • レーザー変位計の基本原理は「三角測距」。投光したレーザーの反射光を受光素子に結像させ、距離が変わると結像位置がずれる量から変位を算出します。
  • 反射のとらえ方で2タイプ。一般面向けの拡散反射型と、鏡面・光沢面向けの正反射型があります。
  • 「ミラー方式」はMEMSミラーでレーザーを振って面を走査する方式。1点計測を段差・形状の面計測へ拡張し、対象の位置ずれにも強いのが特長です。
  • さらに高精度が必要なら共焦点方式・分光干渉方式。透明体や薄膜、nmオーダーの計測に対応します。

レーザー変位計とは?

レーザー変位計(レーザー変位センサ)とは、対象物にレーザー光を当て、その反射光から対象物までの距離や変位(位置の変化量)を非接触で測定する計測器です。接触式のダイヤルゲージやLVDT(差動トランス)と異なり、対象に触れずにµm(マイクロメートル)オーダーの測定ができるため、生産ラインのインライン検査や、やわらかい・動いているワークの計測に広く使われます。

変位センサには、レーザー式のほかに渦電流式・静電容量式・超音波式などの非接触方式があります。中でもレーザー式は、測定距離が長く、高速・高精度で、対応できる素材が広いことから、寸法・段差・厚み・振動・平面度などの計測で標準的に採用されています。本記事では、そのレーザー式の測定原理を掘り下げます。

基本原理①:三角測距方式(三角測量方式)

最も一般的なレーザー変位計の原理が三角測距方式(三角測量方式)です。名前の由来は、投光したレーザー・対象物・受光素子の3点が三角形を形づくることにあります。仕組みは次の通りです。

投光素子(半導体レーザー)から出た光を投光レンズで対象物の表面に集光します。表面で反射した光を受光レンズで集め、PSDやCMOSなどの受光素子上に結像させます。ここで、対象物までの距離が変化すると、反射光の入射角度が変わり、受光素子上での結像位置がずれます。この結像位置のずれ量を電気信号に変換することで、変位量を算出する——これが三角測距の核心です。

センサ本体 投光素子 受光素子 PSD / CMOS レーザー投光 基準位置の対象 距離が変化 反射光 変位量
図1:三角測距方式の基本原理。距離が変わると受光素子上の結像位置がずれる。

受光量そのものではなく「反射光の角度(結像位置)の変化」を見るため、ワークの色むらや背景の影響を受けにくいのが利点です。同色の背景上にある対象でも安定して検出できます。

拡散反射型と正反射型 ― 光沢面をどう測るか

三角測距には、反射光のどの成分を受光するかで2つのタイプがあります。実務での方式選定のカギになる部分です。

拡散反射型:レーザーを測定面に対してほぼ垂直に投光し、四方に散らばる拡散反射光を斜めから受光します。測定レンジを広くとれ、紙・樹脂・加工面など一般的なマット面の測定に向きます。一方、拡散反射がほとんど得られない透明体や鏡面には不向きです。

正反射型:投光角と受光角が等しくなるように光学系を斜めに配置し、鏡のように跳ね返る正反射成分を受光します。鏡面・光沢金属・ガラス・透明体の測定に用いられ、測定レンジは狭くなるものの、繰返し精度・精度は高くなります。

拡散反射型 一般面・広レンジ マット面(紙・樹脂・加工面) 投光 拡散反射 受光 正反射型 鏡面・光沢・透明体/高精度 鏡面・光沢金属・ガラス 投光 正反射 受光 投光角 = 受光角
図2:拡散反射型(左)は一般面向けで広レンジ、正反射型(右)は鏡面向けで高精度。

受光素子のちがい ― PSDとCMOS/CCD

三角測距の精度は「結像位置をどう読み取るか」で決まり、受光素子の種類が効いてきます。

PSD(位置検出素子):素子の両端から得られる2つの出力A・Bをもとに A/(A+B) を演算して受光位置を求める方式。構造がシンプルで応答が速い一方、対象の表面状態や光量分布の影響を受けやすい面があります。

CMOS/CCDイメージセンサ:画素ごとの光量分布を読み取り、ピーク位置から距離を求めます。対象の色むらや表面状態の影響を受けにくく、高精度な変位計測ができるのが強みです。CMOSは画素ごとに信号を読み出すため低消費電力、CCDはバケツリレー方式で高感度、という違いがあります。近年の高精度モデルではCMOSリニアイメージセンサが主流です。

基本原理②:ミラー方式(MEMSミラー走査)

三角測距は基本的に「1点」の距離を測る方式です。これを面的に広げるのがミラー方式(走査方式)です。

代表例が、カメラ内蔵タイプに採用される高精度MEMSミラーによるドライブスキャンです。レーザーをMEMSミラーで反射させ、ビームの角度を高速に振ることで、指定した範囲をなぞるように走査します。1点ごとに三角測距で高さを求めながらスキャンするため、段差・形状・プロファイルといった面の情報を取得できます。

センサ本体 投光部 MEMSミラー 段差・形状のある面 走査(面計測)
図3:ミラー方式。MEMSミラーでビーム角を振り、1点計測を面計測へ拡張する。

さらにカメラ画像で対象の輪郭を認識し、指定ポイントを追従できるモデルもあります。これによりワークの位置がずれても同じ箇所を測れるため、搬送中の製品や治具のばらつきがある現場でも安定した段差・高さ測定が可能になります。

さらに高精度な方式:共焦点・分光干渉

透明体やnmオーダーの計測など、三角測距では難しい領域には別原理の方式が使われます。

共焦点方式:対物レンズを高速に動かして焦点位置を走査し、対象物が焦点位置にあるときだけピンホールを通った光を受光します。材質や傾きによる受光波形の乱れがなく、常に安定した波形が得られるため、透明体や傾いた面、微小段差でも高精度に測定できます。赤・緑など複数波長を同時に使う「マルチカラー共焦点」方式もあります。

分光干渉方式(白色干渉方式):広帯域のSLD(スーパールミネッセントダイオード)光を使い、対象からの反射光と参照光の干渉パターンを波長ごとに解析して距離を求めます。1nm(0.001µm)級の繰返し精度と、ø2mm程度の微小スポットを両立でき、薄膜の厚みや微小部品の高精度計測に用いられます。

測定方式の比較表

代表的な方式の原理・得意分野・精度の目安を一覧にまとめます(数値は一般的な目安で、機種により異なります)。

方式測定原理得意な対象分解能の目安特徴
三角測距(拡散反射)反射光の結像位置のずれ紙・樹脂・加工面など一般面0.1〜数µm級測定レンジが広く汎用的
三角測距(正反射)正反射成分の結像位置鏡面・光沢金属・ガラスサブµm級高精度だがレンジは狭い
共焦点方式焦点一致時のみ受光透明体・傾いた面・微小段差数十nm級材質・傾きの影響を受けにくい
分光干渉方式反射光と参照光の干渉薄膜・微小部品・高精度計測1nm級最高精度・微小スポット
ミラー(走査)方式MEMSミラーで面を走査段差・形状・プロファイルµm級面計測・位置ずれに強い

実務での選定ポイント

設計・生産技術の現場で方式を選ぶときは、次の順で絞り込むと迷いません。

① 対象の表面:マット面なら拡散反射型、鏡面・光沢・透明体なら正反射型か共焦点方式を第一候補に。

② 必要な精度・分解能:µm級で足りるか、サブµm〜nm級が要るか。高精度側ほど共焦点・分光干渉が候補になります。

③ 測るのは点か面か:1点の距離・厚み・振動なら三角測距、段差・形状・プロファイルならミラー(走査)方式。

④ 現場条件:ワークの位置ずれ、測定レンジ、応答時間、設置スペースを確認。

あわせて、カタログの3指標も必ずチェックします。分解能(測定値のばらつき幅。小さいほど高精度)、直線性(理想直線からの誤差。±0.1%F.S. などF.S.比で表記)、応答時間(出力が10→90%に達する時間)です。

よくある質問(FAQ)

Q. レーザー変位計と「レーザー距離計」は何が違いますか?
A. 変位計はµm〜サブµmオーダーの微小な位置変化を高精度に測る計測器で、主に三角測距を用います。距離計は数m〜数十mの長距離を測る用途が中心で、光の往復時間(TOF)や位相差を使うのが一般的です。測定レンジと精度のオーダーが大きく異なります。

Q. 鏡面や光沢のある金属は測れますか?
A. 測れます。鏡面・光沢面には正反射型を選びます。投光角=受光角に配置して正反射成分を受光するため、拡散反射がほとんど得られない面でも安定します。透明体や傾いた面が多い場合は共焦点方式も有力です。

Q. 「ミラー方式」と普通の三角測距はどう使い分けますか?
A. 1点の距離・厚み・振動を測るなら三角測距で十分です。段差・形状・プロファイルを面でとらえたい、またはワークの位置ずれが大きい場合に、MEMSミラーで走査するミラー方式が有効です。

Q. 測定精度を安定させるコツは?
A. 対象の表面状態に合った反射タイプ(拡散/正反射)を選ぶこと、測定範囲の中心(基準距離)付近で使うこと、外乱光や振動を抑えることが基本です。色むらや傾きが問題になる場合は、CMOS受光素子や共焦点方式の採用を検討します。

まとめ

レーザー変位計の原理の中心は三角測距——反射光の結像位置のずれから変位を求める仕組みです。表面に応じて拡散反射型/正反射型を選び、面計測や位置ずれ対策にはミラー方式(MEMSミラー走査)、透明体やnm計測には共焦点・分光干渉方式を使い分けます。まずは「対象の表面・必要精度・点か面か」の3点で候補を絞り込むのが、失敗しない選定の近道です。

出典(一次情報)

  • キーエンス|1次元レーザ変位計(測定原理・方式) keyence.co.jp
  • キーエンス|三角測量方式センサの原理と用途 keyence.co.jp
  • キーエンス|カメラ内蔵レーザー変位センサ(MEMSミラー走査) keyence.co.jp
  • オムロン|変位・寸法測定技術ガイド(測定原理・受光素子) fa.omron.co.jp
  • オプテックス・エフエー|変位センサ 基礎知識(拡散反射・正反射) optex-fa.jp
  • コグネックス|レーザー変位センサの動作原理 cognex.com

※ 精度・分解能などの数値は一般的な目安であり、実際の仕様は各メーカー・機種のカタログをご確認ください。

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