この記事の結論
- 変位センサは「対象までの距離の変化量」を測るセンサ。段差・厚み・振動・位置決めに使う。
- 方式は大きく接触式(LVDT・ワイヤ式など)と非接触式(レーザー三角測距・白色共焦点・渦電流・静電容量)に分かれる。
- 迷ったらまず「測定範囲・分解能・対象材質・環境」の4軸で絞る。長距離&多素材はレーザー、油水環境の金属は渦電流、超高精度なクリーン環境は静電容量/共焦点、数m〜数十mの長ストロークはワイヤ式。
製造現場の寸法検査・段差測定・振動計測に欠かせない「変位センサ」。方式ごとに測れる対象も精度もまるで違うため、選定を誤ると必要な精度が出ません。本記事では主要6方式の原理を図解し、比較表と選び方までをメーカー技術資料の裏取り付きで整理します。
変位計そのものの全体像(種類・原理・用途・選び方)は、まとめ記事「変位計とは?原理・種類・用途を徹底解説」で解説しています。
変位センサとは:何を測る装置か
変位センサ(変位計)は、センサと対象物との距離の変化量=変位を検出し、数値として出力するセンサです。単なる有無検出の近接センサと違い、連続的な距離変化を高分解能で捉えられるのが特徴で、対象物の段差・高さ・厚み・幅・平面度・振動・位置決めなど幅広い計測に使われます。
用途に応じて必要な精度は大きく変わります。数十cm離れた大物ワークの高さを測る用途と、ナノメートル単位で半導体ステージの位置を制御する用途では、適する原理がまったく異なります。だからこそ「方式の理解」が選定の出発点になります。
接触式と非接触式:まず大きく2つに分かれる
変位センサは、対象物に触れるかどうかでまず二分されます。
接触式は、対象の動きを機械的に受け取り、その移動量を電気信号に変換します。代表格は、測定子を押し当てるLVDT(差動トランス)式と、対象に取り付けたワイヤの引き出し量で測るワイヤ式です。構造がシンプルで、光沢・色・透明度など表面状態の影響を受けないのが共通の強みです。一方、対象に触れるため、非常に軟らかい物・高速で動く物・デリケートな表面には向きません。
非接触式は、光・電磁界・静電容量を使って離れたまま測ります。対象を傷つけず高速に測れるため、インライン検査や高速位置決めで主流です。以下では主要6方式を、原理から見ていきます。
主要6方式の測定原理【図解】
① レーザー三角測距方式:最も汎用的な非接触測定
レーザーダイオードが対象表面に微小な光点を投光し、その拡散反射光をレンズでCCD/PSD(受光素子)に結像させます。対象がセンサに対して動くと、受光素子上での結像位置がずれます。この「反射光の当たる位置のずれ」を三角測量の原理で距離に換算するのが三角測距方式です(図1)。
長所:幅広い素材・サイズに対応でき、数mm〜1m級の比較的長い距離も測れます。高速・高精度で汎用性が高く、非接触式で最も広く使われます。短所:対象表面の光沢・色・傾きが精度に影響し、鏡面・透明体は苦手(斜めに受光する正反射方式で対応)。センサ寸法が他方式より大きめです。
② 白色共焦点方式:透明体・超高精度に強い
白色光を対物レンズで分光し、波長ごとに焦点距離が異なる性質を利用します。対象表面でちょうど焦点が合った特定波長の光だけが強く戻るため、その波長から距離を求めます。nm(ナノメートル)オーダーの分解能を持ち、材質依存が小さく、極小のスポット径を保てるのが特徴。表と裏の反射を同時に捉えられるため、透明なガラスやフィルムの厚み測定にも使えます。測定範囲は比較的狭めです。
③ 渦電流式:油・水環境の金属測定に最適
センサ先端のコイルにMHz帯の高周波電流を流すと高周波磁界が発生し、導電性の対象表面に渦電流が誘導されます。この渦電流の大きさはセンサと対象のギャップ(距離)に応じて変化し、それを電圧信号に変換して変位を検出します(図2)。
長所:絶縁物である油・水には反応しないため、液体が付着・介在しても測定でき、耐環境性に優れます。温度安定性も高く(例:±0.015% of F.S./℃ 程度の製品もある)、高速応答です。磁性・非磁性を問わず、アルミ・銅・チタン・SUS304なども測れます。短所:対象は良導体の金属に限られ、樹脂・ガラスなど非導電体は測れません。
④ 静電容量式:クリーン環境での超高精度
センサ電極と対象を2枚の電極板に見立てたコンデンサとして扱い、ギャップに反比例して変化する静電容量から距離を求めます。nmオーダーの極めて高い分解能を持ちますが、測定範囲は非常に狭いのが特徴。ギャップ間の誘電率変化に敏感で、油・水・汚れが入ると誤差が大きくなるため、半導体・真空・研究用途などクリーンで安定した環境で本領を発揮します。
⑤ 接触式(LVDT):堅牢でシンプル
測定子を対象に当て、その移動を差動トランスの電磁結合で電気信号に変換します。摩擦のない構造で長寿命、μm単位の分解能と高い堅牢性を持ち、光沢や色・透明度といった表面状態の影響を受けません。対象に触れられる用途では、シンプルで安定した選択肢になります。
⑥ ワイヤ式:数十mまでの長ストロークを簡単に測る
対象物に取り付けたステンレスワイヤの引き出し量を測る方式で、仕組みは巻尺に似ています。引き出されたワイヤが内部のスプール(ドラム)を回転させ、スプール軸に連動するロータリーセンサ(ポテンショメータやエンコーダ)の回転量を電気信号として出力します。ワイヤはスプリングで常にテンションがかかっており、たるみなく追従します。
長所:最大の特徴は測定ストロークの長さで、数十mm〜数十m級(製品例:測定長38mm〜42.5m)までを1台でカバーできます。ワイヤを滑車で引き回せば斜め・曲がり経路の計測も可能で、設置の自由度が高く、油・ほこり・水といった環境の影響を受けにくいのも強みです。構造がシンプルなぶん低コストで、初期調整もほぼ不要です。短所:対象にワイヤを固定する必要があり、分解能は光学式に及びません(直線性は±0.02〜1%程度が目安)。また、引き出したワイヤを急に離すと勢いよく巻き戻り、断線・故障の原因になるため取り扱いに注意が必要です。
プレス機やリフトのストローク監視、水門・ゲートの開度検出、建機・ステージの位置検出など、「長い動きをまるごと測る」用途で定番の方式です。
6方式まるわかり比較表
※数値は一般的な目安です。実際の分解能・測定範囲は機種や測定条件で大きく変わるため、選定時は各メーカーの仕様値を必ず確認してください。
| 方式 | 接触/非接触 | 分解能の目安 | 測定範囲の傾向 | 対象材質 | 得意な場面 |
|---|---|---|---|---|---|
| レーザー三角測距 | 非接触 | μm級 | 数mm〜1m級(広い) | ほぼ選ばない | 汎用・長距離・多素材の寸法/段差 |
| 白色共焦点 | 非接触 | nm級 | 狭い〜中 | ほぼ選ばない(透明体可) | 透明体の厚み・超高精度 |
| 渦電流式 | 非接触 | μm〜サブμm | 狭い | 導電性金属のみ | 油・水環境の金属、高速・高温 |
| 静電容量式 | 非接触 | nm級 | 非常に狭い | 材質問わず(要クリーン) | クリーン/真空での超高精度 |
| 接触式(LVDT) | 接触 | μm級 | 中 | 問わない | 堅牢・表面状態に左右されない計測 |
| ワイヤ式 | 接触 | レンジ依存(直線性±0.02〜1%目安) | 数十mm〜数十m級(最も広い) | 問わない(ワイヤを固定) | 長ストローク・屋外/粉塵環境・低コスト |
失敗しない選び方:4つの軸で絞る
方式選定は、次の4軸を順に確認すると迷いません。
1. 測定範囲
対象までの距離や動く範囲が収まるかが第一条件です。数mm〜1m級ならレーザー、極小ギャップの超高精度なら静電容量・渦電流・共焦点、数m〜数十mの長ストロークならワイヤ式が第一候補です。範囲を外すと他の性能は意味を持ちません。
2. 分解能(必要な細かさ)
μmで足りるのか、nmが要るのか。過剰な分解能はコスト増につながるため、要求精度に見合う方式を選びます。nmオーダーが必要なら静電容量式・共焦点式が候補です。逆にmm単位の長い動きを把握できれば十分なら、ワイヤ式が最も手軽です。
3. 対象材質
金属限定でよいなら渦電流式が環境耐性で有利。樹脂・ガラス・透明体を含むなら、材質を選ばないレーザーや共焦点が現実的です。接触式(LVDT・ワイヤ式)は材質を問いません。
4. 使用環境
油・水・切削液がかかるなら渦電流式、屋外や粉塵環境の長ストロークならワイヤ式が強い選択肢です。粉塵・汚れが避けられない現場で静電容量式は不利です。高温・真空・振動といった条件も、この段階で仕様と突き合わせます。
よくある質問(FAQ)
Q. 変位センサと測距センサ・近接センサの違いは何ですか?
A. 変位センサは距離の連続的な変化量を高分解能で数値出力します。近接センサは主に有無(ON/OFF)検出、測距センサは比較的粗い距離検出を指すことが多く、微小変位の定量測定には変位センサを用います。
Q. 水や油がかかる環境でも使えますか?
A. 渦電流式が適します。絶縁物の水・油には反応せず、金属ターゲットとの間に液体があっても測定できます(対象は良導体金属に限られます)。接触式のワイヤ式も油・ほこり・水の影響を受けにくく、環境の厳しい現場で使えます。
Q. 透明なガラスやフィルムの厚みは測れますか?
A. 白色共焦点方式が適します。表裏両面の反射を捉えられるため、透明体の厚みをnmオーダーで測定できます。
Q. 数m〜数十mの長い移動量を測りたい場合は?
A. ワイヤ式が定番です。対象に固定したワイヤの引き出し量で測るため、1台で数十m級までカバーでき、滑車を使った斜め・曲がり経路の計測にも対応します。リフトやプレスのストローク監視、水門の開度検出などで広く使われています。
Q. 最も高い分解能が必要な場合はどの方式ですか?
A. 静電容量式と白色共焦点式がnmオーダーを実現します。ただし静電容量式は測定範囲が狭く汚れに敏感なため、クリーンで安定した環境が前提です。
まとめ
変位センサは「対象までの距離変化」を測る装置で、方式ごとに得意分野がはっきり分かれます。汎用・中距離ならレーザー三角測距、油水環境の金属なら渦電流式、透明体や超高精度なら共焦点、クリーン環境の極限精度なら静電容量式、堅牢さ重視ならLVDT、数m〜数十mの長ストロークならワイヤ式。「測定範囲・分解能・材質・環境」の4軸で候補を絞り、最後は各メーカーの仕様値で確定するのが、失敗しない選定の近道です。
出典
- Micro-Epsilon「Precise non-contact measurement(TechNote T001)」 micro-epsilon.com
- 新川電機「渦電流式変位センサの原理と特徴」 shinkawa.co.jp
- オプテックス・エフエー「変位センサまるわかりガイド」 optex-fa.jp
- ヒロテック「変位センサとは(ワイヤ式変位センサの原理・製品仕様)」 hiro-tec.com
- ナノシード「変位センサ わかりやすく解説します」 nanoxeed.co.jp
- オムロン「変位センサ/測長センサ 用語解説」 fa.omron.co.jp
- Automation.com「Comparison of Non-Contact Displacement Sensor Technologies」 automation.com