変位計とは?原理・種類・用途を徹底解説

基礎知識・原理

「変位計」は、対象物の位置がどれだけ動いたかを測る計測器です。製造ラインの厚み検査から、工作機械の位置決め、ダム水門の開閉監視まで、使われる場面は驚くほど幅広く、その分だけ方式も分かれています。本記事では、変位計の定義と測れるもの、接触式・非接触式あわせて7方式の全体像、そして現場でどう使われているかを、メーカー技術資料の裏取り付きで整理します。個別のテーマを深掘りした記事へのリンクもまとめているので、目次代わりにお使いください。

この記事の結論(先に要点)

  • 変位計とは、対象の位置の「変化量(=変位)」を測る計測器。絶対的な寸法そのものではなく、動いた量を高い分解能で追います。
  • 測れるのは厚み・高さ・段差・反り・平面度・ストローク・振れ・振動・偏心など。距離計や測長器とは目的が違います。
  • 方式は接触式(リニアゲージ/リニアスケール/ワイヤ式)と非接触式(レーザー/渦電流/静電容量/超音波)の7系統。
  • 用途は測るスケールで3つに分かれます。nm〜µmの品質検査/µm〜mmの位置決め/mm〜mの構造物監視
  • 選定は①動く範囲 → ②対象と環境 → ③必要な精度の順で絞ると迷いません。
  • 1台で全域をカバーする変位計は存在しません。測りたいものを先に決めることが選定の9割です。

変位計とは:位置の「変化量」を測る計測器

変位計(変位センサ)とは、物体がある位置から別の位置へ動いたとき、その移動量を測定する計測器です。メーカーの技術資料でも「物体がある位置から他の位置へ移動したとき、その移動量を測定するもの」と定義されており、移動量そのものだけでなく、高さ・厚み・幅といった寸法の測定にも使われます。

ポイントは、基準からの「変化」を連続的に見るという点です。ノギスのように絶対的な寸法を1回測るのではなく、基準位置に対してどれだけずれたかを、µm〜nmという細かさで出力し続けます。この「細かい変化を連続で追える」性質が、インライン検査や機械の位置制御に使われる理由です。

変位計で測れるもの

変位計が測れる項目は、動きそのものだけではありません。厚み、高さ・段差、外径、反り・平坦度、ストローク・位置決め、三次元形状、振れ・振動、偏心——といった項目が、いずれも「距離の変化」に置き換えて測定できます。たとえば厚みは、シートの上下から2台の変位計で挟み、両方の距離の合計から求めます。

「変位計」「距離計」「測長器」はどう違うか

現場では似た言葉が混在します。まず、変位計と変位センサは基本的に同じものを指します。センサ単体を指すときに「変位センサ」、計測器として見るときに「変位計」と呼び分けられる程度の違いです。

一方で距離計(測距センサ)は絶対的な距離を測る機器で、精度はmm級が中心。測長器・寸法測定器は寸法そのものを測る機器です。「変化を細かく追いたい」のか「今の距離・寸法を知りたい」のかで、選ぶ機器が変わります。

用語主に測るもの精度の目安代表例
変位計/変位センサ基準からの変化量(変位)nm〜µm 級レーザー変位計、渦電流式、ワイヤ式変位計
距離計/測距センサ対象までの絶対距離mm〜cm 級レーザー距離計、光波測距儀、超音波センサ
測長器/寸法測定器寸法そのもの(長さ・外径)µm 級外径測定器、三次元測定機
リニアスケール可動部自身の位置・移動量µm〜nm 級工作機械の軸位置フィードバック

変位計の種類:接触式と非接触式の7方式

変位計は、対象に触れるかどうかでまず2つに分かれ、そこからさらに7つの方式に枝分かれします(図1)。

変位計の全体像 ─ 接触式と非接触式、7つの方式 変位計 接触式 非接触式 リニアゲージ/LVDT(測定子を押し当てる) 分解能 0.1〜1µm 級 / ストローク 0〜100mm 程度 リニアスケール(目盛を読取ヘッドで読む) 分解能 µm〜nm 級 / 測定長 〜20m 級 ワイヤ式変位計(ワイヤの引出し量を読む) 直線性 ±0.02〜0.1%F.S. / 測定範囲 38mm〜42.5m レーザー式(三角測距・共焦点・分光干渉) 分解能 µm〜1nm 級 / 測定範囲 0.1mm〜1m 渦電流式(対象は導電性の金属のみ) 分解能 サブµm 級 / 測定範囲 数mm / 油・水に強い 静電容量式(クリーン環境が前提) 分解能 nm 級 / 測定範囲 数mm / 汚れに敏感 超音波式(透明体・液面・粉塵環境) 精度 mm 級 / 測定範囲 数cm〜十数m 触れて 測る 離れて 測る ※数値は一般的な目安。機種・測定条件により変わります。
図1:変位計の全体像。接触式3方式・非接触式4方式に分かれ、それぞれ分解能と測定範囲が大きく異なる。

接触式:触れて測る確実さ

測定子やワイヤを対象に当て、その機械的な動きを電気信号に変換します。光の反射条件に左右されないため、対象の色・光沢・透明度を選ばず安定して測れるのが最大の利点です。代表的なのは、測定子を押し当てるリニアゲージ(LVDT)、目盛を読取ヘッドで読むリニアスケール、そしてステンレスワイヤの引出し量を読むワイヤ式変位計の3つです。

弱点は、対象に触れること自体です。柔らかい物、傷を付けられない物、高速で動く物には使えません。

非接触式:離れて測る速さと自由度

光・電磁界・音波を使い、離れたまま測ります。対象を傷つけず、高速に、微小な点をピンポイントで測れるため、インライン検査や超高精度の計測では主流です。レーザー式・渦電流式・静電容量式・超音波式があり、それぞれ得意な対象と環境がはっきり分かれます。

弱点は、対象の表面状態や環境に精度が左右されることです。黒く光を吸収する面、鏡面、大きく傾いた面、粉塵や油煙のある環境では受光量が変わり、精度が落ちます。

7方式の早わかり比較表

※数値はいずれも一般的な目安です。同じ方式でも機種・レンジ・測定条件で大きく変わるため、選定時は必ず各製品の仕様を確認してください。

方式接触/非接触分解能の目安測定範囲の目安対象材質得意な場面
リニアゲージ(LVDT)接触0.1〜1µm 級0〜100mm 程度問わない堅牢・表面状態に左右されない計測
リニアスケール接触µm〜nm 級〜20m 級問わない工作機械・ステージの位置フィードバック
ワイヤ式変位計接触直線性 ±0.02〜0.1%F.S.38mm〜42.5m問わない(ワイヤを固定)長ストローク・屋外・油/粉塵環境
レーザー三角測距式非接触µm 級数mm〜1mほぼ選ばない汎用の厚み・段差・振れ・振動
共焦点式・分光干渉式非接触1nm 級〜0.1mm〜数十mm透明体・鏡面も可透明体・薄膜・超高精度
渦電流式非接触サブµm 級数mm導電性の金属のみ油・水がかかる金属、高速・高温
静電容量式非接触nm 級数mm問わない(要クリーン)クリーン/真空での超高精度
超音波式非接触mm 級数cm〜十数m色・透明度を選ばない透明体・液面・粉塵環境

変位計の用途:現場でどう使われているか

変位計の用途は、測るスケールでおおむね3つに分かれます(図2)。同じ「変位計」でも、この3領域では使われる方式も、求められる精度も、設置環境もまったく違います。自分の案件がどの領域かを見極めることが、方式選定の出発点になります。

変位計は「測るスケール」で用途が3つに分かれる 同じ変位計でも、nm〜µmの品質検査と、数十mの構造物監視ではまったく別の方式が使われる。 ① 精密製造・品質検査 nm 〜 µm / 数mm〜1m 主な方式 レーザー式・共焦点式・分光干渉式 渦電流式・静電容量式 ・液晶ガラス/建材ボードの厚み ・塗布膜厚(繰返精度0.2µm級) ・透明フィルム・シート材の厚み ・二次電池電極板の厚み ・段差・反り・平面度の検査 ・軸の振れ・振動の計測 インラインの全数検査に組み込まれ、 合否判定に直結する領域。 ② 設備・装置の位置決め µm 〜 mm / 数十mm〜数m 主な方式 リニアスケール・リニアゲージ レーザー式 ・工作機械の各軸の位置 ・半導体・液晶ステージの位置決め ・三次元測定機の座標検出 ・プレス機のストローク監視 ・ロボット・搬送軸の位置確認 ・治具の原点出し 動いた結果を機械へ返す(フィード バック)ための領域。 ③ 大型構造物・屋外・インフラ mm 〜 m / 数十mm〜42.5m 主な方式 ワイヤ式変位計 超音波式・レーザー距離計 ・自動車の衝突試験 ・航空機の構造試験・着陸装置 ・建設機械のアウトリガー・ブーム ・油圧シリンダーの位置計測 ・ダム水門の開閉制御 ・制震ダンパー/斜面・土石流の監視 屋外・油・粉塵など、光学式が苦手な 環境をカバーする領域。
図2:変位計の用途は「測るスケール」で3領域に分かれる。領域ごとに主役となる方式が入れ替わる。

① 精密製造・品質検査(nm〜µm)

最も台数が多いのがこの領域です。液晶ガラスや建材ボードの厚み、インクジェット塗布膜の膜厚(繰返精度0.2µm級で測る例があります)、透明フィルム・シート材の厚み、二次電池電極板の厚み、スパッタリングターゲットの厚みなど、生産ラインを流れる材料を止めずに全数測るのが典型的な使い方です。段差・反り・平面度の検査、軸の振れや振動の計測もここに含まれます。

使われるのは主にレーザー式です。透明体や薄膜には共焦点式・分光干渉式、油や切削液がかかる金属には渦電流式、クリーンルームでnm級が要る場面では静電容量式が選ばれます。合否判定に直結するため、カタログ値ではなく実ワークでの繰返精度が問われる領域でもあります。

② 設備・装置の位置決めとフィードバック(µm〜mm)

機械の可動部が「今どこにいるか」を読み取り、制御へ返す使い方です。工作機械の各軸、半導体・液晶製造装置の精密ステージ、三次元測定機の座標検出、プレス機のストローク監視、ロボットや搬送軸の位置確認などが該当します。

ここで主役になるのがリニアスケール(リニアエンコーダ)です。指令値と実際の位置を一致させるクローズドループ制御を支えており、機械の位置決め精度を直接左右します。検査用の変位計との違いは、「対象までの距離」ではなく「自分自身の位置」を測る点にあります。

③ 大型構造物・屋外・インフラ(mm〜m)

数m〜数十mの動きを追う領域です。自動車の衝突試験(ダミー人形・サスペンション・ペダルの動き)、航空機の構造試験や着陸装置、建設機械のアウトリガーや伸縮ブーム、門型クレーンのトロリー位置、油圧シリンダーの位置計測、ダム水門の開閉制御、制震ダンパーの変位監視、斜面や土石流の監視——といった用途が並びます。

この領域では、光学式は測定距離と環境の両面で成立しにくく、ワイヤ式変位計が中心的な役割を担います。ステンレスワイヤの引出し量をロータリーセンサで読む構造のため、対象の色や光沢に精度が左右されず、油・ほこり・水のかかる屋外でも安定します。測定範囲は38mm〜42.5mをシリーズで分担し、直線性±0.02%F.S.以下の製品もあります。滑車を介せば直線上にない動きも測れるため、既存の大型構造物への後付けにも向きます。

注意点は、ワイヤを引き出した状態で手を離すとスプリングの反力で急激に巻き戻り、断線やセンサ破損につながることです。運用ルールを決めて使います。

変位計の選び方:3ステップで絞る

方式が7つもあると迷いますが、順番を決めれば候補はすぐ絞れます(図3)。

方式の選び方 ─ 「動く範囲」で絞り、「対象と環境」で決める ① 動く範囲(レンジ) ② 対象と環境 ③ 選ぶべき方式 〜 数mm 微小ギャップ・薄膜 対象は金属? 油や水がかかる? それともクリーン環境? 金属+油・水 → 渦電流式 クリーン+nm級 → 静電容量式 数mm 〜 1m 厚み・段差・振れ 対象は透明体・鏡面・薄膜? それとも一般的な面? 透明・薄膜 → 共焦点式・分光干渉式 一般面 → レーザー三角測距式 数m 〜 数十m ストローク・構造物 対象に触れてよい? ワイヤを張れる? 触れてよい → ワイヤ式変位計 非接触が必須 → 超音波式・レーザー距離計 最後に④ 必要な精度を数値で確認する ─ 管理値の1/5〜1/10の分解能があれば実務上は足りることが多い
図3:方式選定の流れ。動く範囲でまず絞り、対象と環境で決め、最後に必要精度を数値で確認する。

STEP1 動く範囲(レンジ)を決める

最初に効くのは測定範囲です。数mm以内の微小ギャップなら渦電流式・静電容量式、数mm〜1mならレーザー式、数m〜数十mならワイヤ式、というように、レンジだけで候補が3分の1以下に絞られます。ここを曖昧にしたまま精度の話を始めると、選定は必ず迷走します。

STEP2 対象と環境で方式を選ぶ

次に、何を・どんな場所で測るかです。金属で油や水がかかるなら渦電流式、透明体・鏡面・薄膜なら共焦点式や分光干渉式、一般的な面ならレーザー三角測距式。触れてよくて長いストロークならワイヤ式、非接触が必須で長距離なら超音波式やレーザー距離計が候補になります。

対象の色や光沢がばらつく、粉塵や油煙が避けられない——という条件なら、そもそも光を使わない方式に寄せるほうが安定します。

STEP3 必要な精度を数値で確かめる

最後に精度です。ここでのコツは、「高精度がほしい」ではなく「管理値±0.05mmを判定したい」と数値で決めること。管理値の1/5〜1/10の分解能があれば実務上は足りることが多く、それ以上は価格と設置条件の負担になるだけです。

また、カタログの「分解能」「繰返精度」「直線性」「温度特性」は別々の指標です。表記を揃えずに数字だけを並べると、実力が逆転して見えることがあります。

予算感も先に押さえておく

価格が公開されている汎用クラスは、アンプ内蔵タイプで1台3〜7万円台、高精度・通信対応タイプで10〜15万円台が実勢です(税別・2026年7月時点)。共焦点式・分光干渉式・2D/3Dプロファイラは主要メーカーが価格を公開しておらず、見積対応となります。本体だけでなく、ケーブル・取付金具・コントローラ・定期校正まで含めた総額で比較してください。

もっと詳しく知る:関連記事

ここまでが変位計の全体像です。個別のテーマは、次の記事で詳しく解説しています。

基礎知識・原理を知りたい

違いを比較したい

選び方・価格を知りたい

よくある質問(FAQ)

Q. 変位計とは何ですか?
A. 対象物がある位置から別の位置へ動いたときの移動量(変位)を測定する計測器です。移動量だけでなく、厚み・高さ・段差・反り・振れなどの寸法や形状も、距離の変化に置き換えて測定できます。

Q. 変位計と変位センサは違うものですか?
A. 基本的に同じものを指します。センサ単体を指すときに「変位センサ」、計測器として見るときに「変位計」と呼び分けられる程度の違いです。

Q. 変位計と距離計はどう違いますか?
A. 目的が違います。変位計は基準からの変化量をnm〜µm級で連続的に追う機器、距離計は対象までの絶対距離をmm級で測る機器です。厚みや段差の管理なら変位計、寸法出しや測量なら距離計を選びます。

Q. 変位計にはどんな種類がありますか?
A. 接触式(リニアゲージ/LVDT、リニアスケール、ワイヤ式変位計)と、非接触式(レーザー式、渦電流式、静電容量式、超音波式)の7方式に大別されます。

Q. 接触式と非接触式はどちらを選べばよいですか?
A. 対象に触れてよいかで決まります。柔らかい物・傷を付けられない物・高速で動く物なら非接触式です。逆に、対象の色や光沢がばらつく、粉塵や油がかかるといった条件では、光の影響を受けない接触式が安定します。

Q. 数m〜数十mの長いストロークを測りたいときは?
A. 接触式のワイヤ式変位計が定番です。測定範囲は38mm〜42.5mまでをシリーズで分担し、直線性±0.02%F.S.以下の製品もあります。滑車を使えば直線上にない動きにも対応でき、屋外や油・粉塵環境にも強いのが特長です。

Q. 透明なガラスやフィルムの厚みは測れますか?
A. 共焦点式や分光干渉式が適します。表裏両面の反射を捉えられるため、透明体の厚みをnmオーダーで測定できます。一般的なレーザー三角測距式は透明体が苦手です。

Q. 変位計の選定は何から始めればよいですか?
A. 「何を、どのくらいの範囲で動くものを測るか」からです。動く範囲でまず方式を絞り、次に対象材質と設置環境で決め、最後に管理値から必要な分解能を逆算します。この順番なら、過剰な精度を買わずに済みます。

まとめ

変位計は、対象の位置の変化量を高い分解能で測る計測器です。接触式3方式・非接触式4方式があり、それぞれ得意なレンジ・対象・環境がはっきり分かれています。用途は「nm〜µmの品質検査」「µm〜mmの位置決め」「mm〜mの構造物監視」の3領域に整理でき、領域が変われば主役になる方式も入れ替わります。

選定で迷わないコツは、①動く範囲 → ②対象と環境 → ③必要な精度という順番を守ることです。1台で全域をカバーする変位計は存在しないため、「測りたいものを先に決める」ことが選定の9割を占めます。数値はいずれも目安のため、最終判断は各製品の仕様書で行ってください。

出典(一次情報)

  • キーエンス|変位計(変位センサ)・寸法測定器とは keyence.co.jp
  • オプテックス・エフエー|変位センサまるわかりガイド(変位センサの基礎知識) optex-fa.jp
  • オプテックス・エフエー|変位センサ 測定・検査用途別アプリケーション集(厚み測定) optex-fa.jp
  • オムロン|変位センサ/測長センサ 用語解説 fa.omron.co.jp
  • Micro-Epsilon|非接触変位センサ(測定原理) micro-epsilon.jp
  • ミツトヨ|制御用リニヤスケール(リニアエンコーダ) mitutoyo.co.jp
  • ヒロテック|ワイヤ式変位計(製品ラインナップ・仕様) hiro-tec.com
  • ヒロテック|変位計とは(原理・特徴・メリット/デメリット) hiro-tec.com
  • ヒロテック|変位計 導入事例 hiro-tec.com

※ 精度・分解能などの数値は一般的な目安であり、実際の仕様は各メーカー・機種のカタログをご確認ください。

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