ワイヤ式変位計はどう動く?巻尺のような仕組みと出力方式のポイント

基礎知識・原理

この記事の結論

  • ワイヤ式変位計は、対象物に固定したワイヤの引き出し量をスプールの回転に変え、ポテンショメータやロータリーエンコーダで電気信号に変換する接触式センサ
  • 構造は巻尺に近く、初期調整なしで数mm〜数十mのストロークを追える
  • 直線性(精度)は製品によって±1%F.S.前後から±0.02%F.S.以下まで幅があり、用途に応じて選ぶ
  • 油・粉塵・水に強い一方、ワイヤを勢いよく戻すと断線やセンサ破損のおそれがある

ワイヤ式変位計とは

ワイヤ式変位計(ワイヤ式変位センサ)は、対象物に先端を固定したステンレスワイヤの引き出し量を測定し、電気信号として出力するセンサです。海外ではstring potentiometer(ストリングポテンショメータ)、cable transducer(ケーブルトランスデューサ)、通称「yo-yo pot」とも呼ばれ、原理そのものは世界共通です。

構造が巻尺(メジャー)に近いのが最大の特徴で、光を使うレーザー式や、目盛りを直接読み取るリニアスケールとは仕組みが根本的に異なります。特に数m〜数十mという長いストロークを、取り付けも簡単に、初期調整なしで測れる点が実務で重宝されています。

原理① 構造:巻尺のように動く4つのパーツ

ワイヤ式変位計の内部は、大きく4つの部品で構成されています。

  • 測定用ワイヤ:ステンレス製の細いワイヤ。先端を対象物に固定する
  • スプール:ワイヤを巻き取る円筒状の部品。ワイヤの出し入れに合わせて回転する
  • トーションスプリング:スプールに常に一定の張力(テンション)をかけ、ワイヤのたるみを防ぐ
  • 回転センサ:スプールの回転量を電気信号に変換する部品(ポテンショメータまたはロータリーエンコーダ)

対象物が動くと、固定されたワイヤが引き出され、その分だけスプールが回転します。スプールの軸は回転センサの軸と直結しているため、ワイヤの引き出し量(変位量)がそのままセンサの回転角に変換され、電気信号として出力される仕組みです(図1)。センサ本体とワイヤ先端を対象物に固定するだけで測定を開始でき、レーザー式のような光軸調整や、リニアスケールのような目盛り位置合わせは基本的に不要です。

また、光や電界を使わず機械的にワイヤの引き出し量をとらえる方式であるため、対象物の色・材質・表面の反射率といった光学的な条件に測定結果が左右されにくいという特性もあります。

対象物 (移動体) 変位量 L センサ本体 スプール (ワイヤを巻き取る) 回転センサ ポテンショメータ /ロータリーエンコーダ 電気信号 電圧 or パルス
図1:ワイヤ式変位計の構造。対象物の変位量Lがワイヤの引き出し量としてスプールに伝わり、回転センサが電気信号に変換する。

原理② 出力信号:ポテンショメータとロータリーエンコーダの違い

スプールの回転を電気信号に変える回転センサには、主に2つの方式があります。

ポテンショメータ方式は、回転軸に連動する抵抗体(分圧器)の抵抗値変化を電圧として取り出す、いわばアナログ式です。構造が単純で複雑な信号処理回路を必要とせず、0〜10Vや4〜20mAといった扱いやすいアナログ出力を直接得られるのが利点です。

ロータリーエンコーダ方式は、回転量をパルス(デジタル信号)としてカウントする方式です。RS422やCANopen、SSI、Profibus、EtherCAT、Profinetといった産業用の通信規格に対応した出力を持つ製品もあり、PLCやコントローラへ直接デジタルで取り込みたい場合に向いています。

どちらの方式でも「ワイヤの引き出し量を回転量に変換する」という基本原理は共通です。選定の分かれ目は、既存の計測システムがアナログ入力とデジタル入力のどちらを想定しているか、という接続性の問題になります。

精度を左右する要因

ワイヤ式変位計の測定精度(直線性)は、主に次の要因で変わります。

  • ワイヤのたわみ:ワイヤは重力や風の影響でわずかにたわむことがあり、垂直・長距離での設置では誤差要因になる
  • 温度変化:気温の変化はワイヤの熱膨張・収縮と、ポテンショメータの抵抗値の両方に影響する
  • 対象物の移動速度:スプールがワイヤを巻き取れる速度には限界があり、急激な動きには追従できないことがある
  • スプールの巻き取り精度:ワイヤが均一に巻かれないと、回転量と引き出し量の比例関係がわずかにずれる

このため一般的な目安として、直線性は製品グレードにより±1%F.S.前後から、高精度モデルでは±0.02%F.S.以下まで幅があります。例えばストローク5mの製品で直線性±0.02%F.S.なら、誤差は理論上おおむね±1mm程度に収まる計算です(数値は製品・条件により異なるため、実際の選定ではメーカーの仕様書で確認してください)。

主な仕様一覧(製品ラインナップで比較)

測定範囲や直線性、出力方式は製品シリーズによって大きく異なります。参考として、ワイヤ式変位センサの代表的なラインナップを比較します。

シリーズ測定範囲直線性出力方式保護等級
GX2000〜3m/12m±0.1〜0.15%F.S.ポテンショ、0-10V、4-20mA、CANopenIP69K
SXM150〜750mm±0.1%F.S.ポテンショメータIP50
SX5050〜1,250mm±0.02%F.S.以下ポテンショ、電圧、電流、RS422、CANopen、SSIIP67
SX801,000〜3,000mm±0.02%F.S.上記+Profibus、EtherCAT、ProfinetIP67
SX1203,000〜5,000mm±0.02%F.S.同上IP67
SX13510〜42.5m±0.02%F.S.同上IP67
MH601〜4m±0.1%F.S.ポテンショ、電圧、電流、CANopenIP69K
表1:ワイヤ式変位センサの代表的なラインナップ比較(ヒロテック取扱製品を参考に作成)

こうしてラインナップを並べると、ワイヤ式変位計は38mm程度の短いストロークから42.5mという長大な範囲までを、シリーズを使い分けることで1方式でカバーできることが分かります。これは、光学式変位計が数mm〜1m程度、レーザー距離計が数百mをmmオーダーで測る、というスケール感とは異なる守備範囲です。

メリットとデメリット

メリット

  • センサ本体とワイヤ先端を固定するだけで初期調整なしに計測を開始できる
  • 光を使わないため、油・粉塵・水などの環境でも計測精度が落ちにくい(IP69K対応品もある)
  • 滑車を介せば直線上にない動きも測定できるなど、設置の自由度が高い

デメリット

  • 接触式のため、対象物にワイヤを固定できない・触れられない用途には使えない
  • ワイヤを引き出した状態で不用意に手を離すと、スプリングの反力で急激に巻き戻り、ワイヤの断線やセンサ本体の破損につながることがある
  • 光学式のような非接触計測に比べ、対象物への物理的な取り付け作業が必要になる

どんな場所で使われている?

ワイヤ式変位計は、数m〜数十mという長いストロークを扱える特性を活かし、自動車の衝突試験(ダミー人形やサスペンションの変位計測)、航空機の構造試験・着陸装置、建設機械のアウトリガーや伸縮ブームの位置検出、門型クレーンのトロリー位置測定、油圧シリンダーのストローク計測、ダム水門の開閉制御など、屋外・産業用途で幅広く使われています。

よくある質問

Q. ワイヤ式変位計とロータリーエンコーダ単体は何が違いますか?

A. ロータリーエンコーダは回転量そのものを検出する部品です。ワイヤ式変位計は、そのロータリーエンコーダ(またはポテンショメータ)にワイヤとスプールの機構を組み合わせ、直線的な変位(リニアな動き)を測れるようにしたセンサです。

Q. 測定精度はどれくらいですか?

A. 製品グレードにより±1%F.S.前後から±0.02%F.S.以下まで幅があります。一般的な目安として、高精度モデルほど短〜中ストローク向け、長ストローク向けのモデルはやや直線性が緩めになる傾向があります。実際の数値は必ずメーカーの仕様書で確認してください。

Q. 屋外や過酷な環境でも使えますか?

A. IP67やIP69Kに対応したモデルであれば、油・粉塵・水しぶきがかかる屋外環境でも使用実績があります。ただし機種によって対応等級が異なるため、設置環境に応じて選定する必要があります。

Q. ワイヤを引き出したまま手を離してしまったら?

A. スプリングのテンションで急激に巻き戻り、ワイヤの断線やセンサ内部の破損につながるおそれがあります。取り付け・取り外しの際はワイヤをゆっくり戻すか、対象物に確実に固定した状態を保つ必要があります。

まとめ

ワイヤ式変位計は、対象物に固定したワイヤの引き出し量をスプールの回転に変え、ポテンショメータまたはロータリーエンコーダで電気信号に変換する接触式のセンサです。巻尺に似たシンプルな構造ゆえに初期調整が要らず、38mmから42.5mまでという幅広いストロークを、環境の影響を受けにくい形でカバーできるのが強みです。一方で、接触式ゆえの設置条件や、ワイヤの取り扱いには注意が必要です。原理を理解した上で、直線性や出力方式、耐環境性能を製品ラインナップから比較して選ぶことが、失敗しない選定につながります。

出典

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