接触式と非接触式の変位計を比較|測定力・材質制約から選ぶ

接触式と非接触式 基礎知識・原理

この記事の結論

  • 接触式の制約は「測定力」。JIS B7503 はリニヤゲージの測定力を最大1.5〜2Nと規定しており、薄膜や柔軟物はこの力で沈み込む
  • 非接触式の制約は「対象物の材質・表面」。渦電流式と静電容量式は導電体が前提、レーザー式は黒色・鏡面・透明が苦手
  • 「非接触式なら何でも測れる」は誤解。むしろ材質を選ばないのは接触式のほう
  • 変形しない対象なら接触式、変形する対象なら非接触式——ただし非接触側は材質で方式を絞り込む必要がある

変位計を選ぶとき、まず「接触式か非接触式か」で大きく二分されます。このとき「非接触式のほうが新しく、対象を傷めず、何でも測れる」と考えてしまいがちですが、実務ではそう単純ではありません。それぞれに固有の制約があり、しかもその制約の性質がまったく異なるためです。この記事では、接触式の「測定力」と非接触式の「材質制約」という2つの論点に絞って、選定の判断材料を整理します。

接触式の制約:測定力がワークを変形させる

接触式変位計は、測定子を対象物に押し当てて位置を読み取ります。このとき対象物には必ず力が加わります。これを測定力と呼びます。

測定力は感覚的な話ではなく、規格で上限が定められています。JIS B7503(ダイヤルゲージ・リニヤゲージ関連)では、スピンドルを鉛直下方に置いた場合の最大測定力について、目量0.01mmで1.5N、目量0.002mmおよび0.001mmで2Nを超えてはならないと規定されています。

1.5〜2Nというのは、おおよそ150〜200gの物体を載せたときにかかる力に相当します。金属ブロックのような剛性のある対象なら、この程度の力で変形することはまずありません。しかし薄い樹脂フィルム、発泡材、ゴム、薄肉のパイプといった対象では話が変わります。測定子が押し込んだ分だけ表面が沈み込み、その沈み込み量がそのまま測定誤差になるためです(図1)。

接触式の制約:測定力がワークを変形させる JIS B7503 では、リニヤゲージの測定力の上限を 1.5〜2N と規定している 剛性のあるワーク(金属ブロックなど) 測定力 変形しない 測定値はそのまま信頼できる 薄い・柔らかいワーク(樹脂膜・ゴムなど) 測定力 沈み込み 測定力で沈み込む その分がそのまま測定誤差になる
図1:接触式の測定力による誤差。剛性のある対象では問題にならないが、薄い・柔らかい対象では沈み込みがそのまま誤差になる。

この問題は測定子の形状(球面・平面・ナイフエッジ)や測定力を下げたモデルの選択である程度緩和できますが、原理的にゼロにはできません。対象物が変形しやすいなら、非接触式を検討するのが筋です。

測定力以外にも、接触式には摺動部の摩耗という宿命があります。測定子やワイヤは消耗品であり、繰り返し使用すれば交換が必要になります。高速で動く対象への追従にも機械的な限界があります。

非接触式の制約:対象物の材質と表面を選ぶ

では非接触式なら万能かというと、そうではありません。非接触式は「触れずに測る」ために何らかの物理現象を利用しており、その現象が成立する対象でなければ測定できないからです。方式ごとに見ていきます。

渦電流式:導電体(金属)に限られる

渦電流式は、センサコイルにMHzオーダーの高周波電流を流し、対象物の表面に発生する渦電流の大きさから距離を求めます。渦電流は電流が流れる材質にしか発生しないため、測定対象は導電体(通常は金属)に限られます。樹脂やゴム、木材、ガラスは測定できません。

ただし磁性体である必要はなく、アルミ・銅・チタンなどの非磁性金属や、オーステナイト系ステンレス(SUS304など)も測定可能です。測定範囲は0.5mm〜25mm程度のラインナップが一般的で、最大45mm程度まで対応する製品もあります。

特筆すべき利点として、水や油がかかっても測定に影響しません。これはレーザー式や超音波式にはない性質で、非接触式のなかでは耐環境性に優れた方式です。また直流から高い周波数まで応答するため、高速な振動計測にも使われます。

静電容量式:導電体が前提、かつ近距離

静電容量式は、センサ電極と対象物を対向させて静電容量を測り、その値から距離を求めます。ナノメートルレベルの分解能を持つ高精度な方式ですが、電極として機能する導電性の対象が基本となり、測定距離もごく近距離に限られます。

レーザー式:色・光沢・透明度に左右される

レーザー三角測距方式は材質そのものは問いませんが、表面の光学特性に強く依存します。黒色やつや消しの面は光を吸収して反射光が弱くなり、鏡面は正反射で受光素子が飽和し、ガラスやフィルムなどの透明体は光が透過してしまいます。傾いた面も反射光が戻らず測定できないことがあります。

対応可否の一覧

ここまでの制約を対象物ごとに整理すると、図2のようになります。

対象物の材質・表面で見た対応可否 非接触式は方式ごとに測れる対象が限られる。接触式は材質を選ばない。 対象物 接触式 ワイヤ式・LVDT レーザー三角測距 非接触 渦電流式 非接触 静電容量式 非接触 金属(導電体) 樹脂・ゴム(非導電体) × × 黒色・つや消し 色は無関係 色は無関係 鏡面・透明体 × 導電体なら可 導電体なら可 薄い・柔らかい × 導電体なら可 導電体なら可 ※△=調整すれば測れる場合がある。接触式が×になるのは測定力で変形する対象のみで、材質そのものは問わない。
図2:対象物の材質・表面別の対応可否。非接触式は方式ごとに測れる対象が限られるのに対し、接触式は材質を問わない。

この表から読み取れるのは、「非接触式なら何でも測れる」という理解が事実と逆だということです。材質を選ばないのはむしろ接触式のほうで、金属でも樹脂でもゴムでも、黒くても鏡面でも透明でも、触れられさえすれば同じように測れます。ワイヤ式変位計が黒いゴム部品や透明なアクリル板でも問題なく測定できるのは、この性質によるものです。

逆に接触式が使えないのは、測定力で変形する対象、触れてはいけない対象(高温・高速回転・清浄度が要る対象)、そもそもワイヤや測定子を固定できない対象に限られます。

選定の実務:3つの問いで絞る

以上を踏まえると、接触式と非接触式の選定は次の順序で判断できます。

  • 問い1:対象物は測定力(1.5〜2N程度)で変形するか。変形するなら非接触式へ
  • 問い2:触れてはいけない理由があるか(高温・高速回転・非破壊が必要など)。あるなら非接触式へ
  • 問い3:非接触式を選ぶ場合、対象物の材質は何か。金属なら渦電流式が候補、非導電体ならレーザー式、ただし黒色・鏡面・透明なら条件出しが必要

問い1と問い2のどちらにも当てはまらないなら、接触式が有力な選択肢になります。材質や表面状態による制約がなく、条件出しの手間も少ないためです。数m規模のストロークを扱うならワイヤ式、mm〜数十mmの精密計測ならLVDT(差動トランス)式が代表的な選択肢になります。

環境耐性は「非接触=有利」ではない

もう一点、誤解されやすいのが環境耐性です。非接触式は対象に触れないぶん摩耗しませんが、油・粉塵・水しぶきのある環境ではレーザー式の受光量が低下します。投光窓の清掃が前提になる現場も少なくありません。

一方、渦電流式は水や油の影響を受けず、接触式のワイヤ式変位計もIP69K対応品があるなど、方式によって耐環境性は大きく異なります。「接触か非接触か」という軸と「環境に強いかどうか」という軸は独立しているため、分けて検討する必要があります。

よくある質問

Q. 測定力はどのくらいなら問題になりますか?

A. 対象物の剛性次第です。JIS B7503 が定める上限は1.5〜2Nですが、この力で沈み込むかどうかは材質と形状で決まります。目安として、指で押して跡が残るような柔らかさなら測定力の影響を疑うべきです。判断が難しい場合は、同じ対象を非接触式でも測って値を突き合わせる方法があります。

Q. 樹脂やゴムを非接触で測りたい場合、どの方式ですか?

A. 渦電流式と静電容量式は導電体が前提なので使えません。レーザー式が候補になりますが、対象が黒色やつや消しの場合は受光量の調整が必要です。透明な樹脂フィルムはレーザー式でも難しく、専用の透明体測定モードを持つ機種を検討することになります。

Q. 接触式のほうが精度は低いのですか?

A. 一概には言えません。LVDT(差動トランス)式の接触式変位計はµm単位の分解能を持ち、摩擦のない構造で長寿命です。一方ワイヤ式は±0.02〜0.15%F.S.が中心で、長ストローク向けの方式です。接触式のなかでも用途によって精度帯が大きく異なります。

Q. 接触式は対象物を傷つけませんか?

A. 測定子が接触する以上、可能性はあります。塗装面や鏡面仕上げなど、傷が許容されない対象では非接触式を選ぶべきです。ワイヤ式の場合は測定子ではなくワイヤ先端を固定するため、固定金具の取り付け跡が問題にならないかを確認します。

まとめ

接触式と非接触式の違いは、どちらが優れているかではなく、制約の性質が異なることにあります。接触式の制約は測定力であり、JIS B7503 が定める1.5〜2Nという力で変形する対象——薄膜、発泡材、ゴムなど——には向きません。非接触式の制約は対象物の材質と表面であり、渦電流式と静電容量式は導電体が前提、レーザー式は黒色・鏡面・透明で条件出しが必要になります。裏を返せば、材質や表面状態を問わずに測れるのは接触式のほうです。まず対象物が変形するか、触れてよいかを確認し、非接触式が必要なら材質から方式を絞り込む——この順序で検討すれば、選定を誤ることは少なくなります。

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各方式の測定原理そのものについては、変位センサとは?6つの測定方式と失敗しない選び方 で解説しています。

出典

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